ビジネススクールの仲間が企画してくれた「現代アート入門講座」。
当日参加できなかったので録画を拝見した。
今回はMBA生向けとあって、アートのマーケット規模や関わるプレイヤーを紹介していただき、業界全体、エコシステムがどのような構造になっているのを外観することができた。
CONTENTS
アーティストとコーチの傾向
アートへの関心事は、個々人によって様々である。
たとえば、アーティスト本人や鑑賞者は、絵に込められた作家の思いという個人の内面(インテグラル理論の四象限でいう左上象限)への関心が高い人がおそらく多い。
一方、資産として捉えられるようになったコレクターからすると、価格といった個人の外面(右上象限)に焦点があたる。
アートの話題の中では、今回のように、業界全体がどのようになっているかの集団の外面(右下象限)に触れられる機会があまりないように思え、貴重な話だった。
こういうお話を聞くと、アーティストの方がアート単体で生きていくには、左下象限の理解の度合いは問われているように思う。
そこをうまく捉えている代表者として村上隆さんが挙げられるだろう。
左下象限への理解とビジネス感覚にも優れていて、ギャラリストでありながら、コレクターでもありながら、キュレーターでもあり、版権をガッツリにぎって管理することをしている。
コーチやカウンセラーも、アーティスト的な感覚は近いところがあり、左下象限への理解が集合意識として欠けている感覚を個人的に持っていて、そもそもコーチングやカウンセリングという業界構造や商品特性を理解することが問われていて、私自身も、コーチ業界のキュレーターとして、そういう場を提供したいと思った。
アートとは何か
さて、今回の講座の中で最も印象的だったことは、講師の高橋さんがおっしゃっていた「アートとは、自分にとって大切なものをカタチにしたもの」という表現だった。
素晴らしい表現だと思った。
企業においても、ビジョンアートといって、ビジョンをカタチにするところもあるほどだ。
これは、コーチングにおいても同じことが言える。コーチングも、その個人にとって大切なものを明確にするものと言える。ゆえに、コーチの創造力は試されるし、思考のみならず、感性も問われている。
また、この「アートとは何か」という問いは、その性質は重層的であり、目的も、個人や文脈によって異なり、あまりにも多くのことが言える。
その多様性を踏まえた上で、コーチングとアートの共通点と差異を考えてみたい。
アートとコーチングの共通点
1つは、先ほどあげた「自分にとって大切なものをカタチにする」という点。
アーティストは自らの内面を表現することでカタチにし、コーチはセルフコーチングでカタチにすることができる。
鑑賞者・クライアント側でみると、それはアーティスト・コーチとの共同作業によってカタチになる。
鑑賞者がその作品に惹かれるのは、既にその個人に内在する想いがあるからであって、作品との対話を通じて完成される。
自分にとって大切なものが、作品としてカタチとなる。
このあたりも共通している。
もう1つは、「物事に対する視点や視野を変える」という点が考えられる。
我々人間というのは、誰もがバイアスをもっていて、脳にある種のバグを抱えた生き物だといえる。キャッチする情報の種類や解釈そのものも、自分の独自の色に染まっている。
テクノロジーが進歩した今、グーグルの検索結果やAmazonやyotubeのリコメンドが進化していることも考えると、なおのこと、自分の視点や視野は狭まっている危険性がある。
コーチングにおいては、コーチが投げかける質問という命令によって、
コーチから提供する視点や視野を活かして物事に対する認識を変える。
アートも、バンクシーがわかりやすいが、作品を通じて、視点や視野を提供していると言える。
どうしても自分自身に関心のない社会問題は誰にでもあって、どこか他人事のように思えていても、作品を通じて認識を変えてくれる。
アートとコーチングの差異点
では、違いは何だろうか。これも色々言えるだろう。
いの一番に浮かぶのは、前回今道先生の書籍を通じて書いたことだが、
「言語領域を超えるか否か」にあるだろう。
アートは、抽象的なものや複雑なものを、言語を使わず表現できる。
コーチングやカウセリングも、もちろんある。
箱庭療法はその1つであるし、フォーカシングは言葉にならないもの(フェルトセンス)を捉えて、時に絵を書いたりすることもある。
その点は共通しているといえる。
ただどこかプレバーバルな領域(言語として表現できるがその個人にとっては言語化が難しい領域)に部分が多いように思う。
アートには、トランスバーバルな領域(言語として表現できない、言語領域を超えるもの)を表現できる。
小松美羽さんの作品はその典型例といえる。
まとめ
以上のことから、アートとコーチングは、言語領域を超えるか否かの違いがありつつも、どちらも視野や視点を変えてくれるものであって、自己の想いをカタチにするものである点で共通している。
今回触れられなかったが、スキルにおいては、これもサブスキルに分解していけば、共通点と差異点はあるだろう。
私自身も今年は創作活動をしていく中で、スキルレベルでもその差を観察していきたい。
2021年2月24日の日記より
2021年2月26日