前野隆司さんの著書「思考脳力のつくり方」を読み始めた。
システム思考の本かと思えば、もはやこれはシステム思考を1つの軸に展開される前野さんならではの「思考の発達モデル」といえるだろう。
ステップ1 要素還元思考
ステップ2 システム思考
ステップ3 ポスト・システム思考
ステップ4 システム思想
このような発達を遂げていくのだが、システム思考の限界点をあげている第三章から自分の関心もあっておもしろくなってきた。
複雑系科学を持ち出し、システム思考の限界点を指摘するのだが、これは何もシステム思考だけの限界なのではなく、論理と科学の限界をわかりやすく示してくれている。
CONTENTS
システム思考の有効性と限界
システム思考は、これまでの要素還元思考では捉えきれなかったシステムを掴むために有効となる。
よくおきる偽解決もシステムを理解すればずいぶんと解消される。
インテグラル理論の四象限でいえば右下象限は社会構造を捉えていく上でシステム思考は肝になる。
もっといえば右下象限のみならず、システムには心理システムとして左上象限を扱うことができるし、カルチャーシステムといえ左下象限を扱うこともできるし、四象限のつながりを理解する上でもシステム思考は有効になる。
さらにシステム思考自体にもどれくらいの解像度で捉えることができるのかで、個々人によって差がある。私個人は右下象限に一番課題感をもっているため、システム思考の精度を磨きたいと思う。
一方、システム思考でどれだけ解像度高く描けたとしても、それはシステム全体の挙動を正確に把握し予測することにはならない。
大雑把にモデル化したものにすぎない。
なぜなら現実のシステムは私たちが認識できないレベルで複雑であり、創発性をもっている。
だからといってシステム思考が無意味にはならず、有効であって、ただあくまでモデル化したことに過ぎないことを認識した上で活用することが重要になる。
複雑系科学の重要性
ここで、複雑系科学の重要性を改めて感じる。
発達科学の中でも、カットフィッシャー先生が、発達心理学に複雑系科学の発想や研究方法を取り入れることでダイナミックシステム理論という洞察深い理論を提唱した。
複雑系科学を用いた研究は、多岐にわたるが、科学がより洞察深いものになることから、複雑系科学も最低限の知識は教養としてもっておきたい。
研究として活用していくことの文脈だけでなく、そもそも些細な日常の現象をより多面的に豊かに捉えるために重要な分野だ。
複雑系科学の中には、システム理論、ネットワーク理論、ゲーム理論、非線形力学、パターン形成、進化と適応、集団行動論など多岐にわたるが、関心の高いシステム理論、ネットワーク理論は触れておきたい。
メジャーなところでいうと、ハイエクの複雑性理論、カオス理論あたりも触れてみたい。
なかなか関心領域の広がりに対して、実態が追いつかないところがあるが、こうやって関心領域の広がりが数珠つなぎ的に増えてきたのは良いことだ。
この本の著者である前野さんと、本書籍を紹介いただいた有馬さん加藤さんに感謝しながら、自分の領域をゆっくり広げていきたい。
2021年3月6日の日記より
2021年3月7日