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日記「あじわい」

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漫画ワンピースを”インテグラル理論”で読む #67

インテグラル理論

2/9にワンピースの最新巻が出たこともあり、ONE PIECEをインテグラル理論を通じて読んでみたい。

特に、インテグラル理論の中でも発達構造、スパイラルダイナミクスを補助線に話を進めたい。

図1

作品全体を通じて感じる作者の世界観

ワンピースが人気を博した理由の1つに、キャラクターごとのストーリーの深さがある。

群集劇として物語が展開され、ルフィ以外の仲間のストーリーが他のアニメと比較して濃く描かれている。

仲間だけでなく、ライバルや戦う相手(敵)の回想シーンが多く、これまでのストーリーにも触れている。

例えば、私の好きなキングダムでは、主キャラクター以外のストーリーは描かれていない。

ワンピースは各キャラのストーリーを大切にしている点が、多次元相対主義な現れで、発達構造でいうグリーン段階の特徴と言える。

敵キャラにも敵キャラの正義があるという相対主義な見方は、漫画、アニメ、映画、色んな作品通じて、ここ数十年くらいで随分見られるようになったきた。

たとえば鬼滅の刃でも、炭治郎が鬼の気持ちを理解するところが描かれる。

我々がそういう作品でないとどこかシラけてしまう部分があるのだとすると、我々の集合意識自体が発達してきている現れといえるだろう。

尾田栄一郎先生はグリーン段階かというと、ティール段階の特徴も作品には現れる。

ワンピース自体が、未だ98巻にも関わらず、不明な点が多い。

ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)が何であるのか、空白の100年が何であるのかなど。

このあたりは、作品全体を通じて壮大な1つのメッセージを表現しようとしている点は、統合的段階の特徴といえる。

ここのどう展開されていくのかがワンピースの魅力の1つだろう。

「海賊王」の意味から見る発達段階

ワンピースには、ルフィをはじめ、物語に出てくる海賊たちは「海賊王」になることを目指す。

この「海賊王」という言葉1つとっても、その裏にある意味が異なっており、段階の違いが見える。

四皇カイドウの段階

わかりやすいのはカイドウ。

画像2

ここのセリフにも現れているように、カイドウは、海賊王になることで、恐怖に包まれた暴力の世界にし、圧倒的な力をもって支配を望んでいる。

この点から、彼はレッドの段階といえる。力強く衝動的で、極めて自己中心的で強い存在。

ルフィの発達段階

一方、ルフィは「海賊王」を次のように定義する。

支配なんかしねェよ。この海で一番自由な奴が海賊王だ。

画像3

ここに、ルフィ独自の価値体系が伺える。

この特徴からオレンジ以上の段階といえる。

天竜人を殴る有名なシーンがあるが、この点も世間の価値観にとらわれていない現れで、オレンジ以上。

では、グリーン以上かというと、他者視点は不足しており、ルフィの自己中心的な考えで突っ込んでいくふるまいから、自己を客体化することが難しく、グリーン以上のふるまいが見れず、オレンジの段階といえる。

発達科学を扱うリスクと倫理

では、ルフィはティールやグリーン段階に到達していないオレンジだから未熟なのかというと、そうではないことはわかるだろう。

ルフィにはルフィにしかない魅力が豊富にある。

人の魅力というのは、今の科学では説明できないほど、もっともっと奥深いもの。

その人ならではの視点、知識、発想、教養、経験など、その人にしかないものがたくさんあるし、その人にしか息づいていないものがたくさんあり、そのすべてが人としての魅力を創り出している。

キーガンにしてもあくまで意味構築の観点での発達段階であり、グレイブスは価値観、ジェイムズ・ファウラーは信仰といって、多様にあるうちの1つの観点にすぎない。

ゆえに、成人発達理論やインテグラル理論のような発達科学を扱うにあたっては、何かレッテル貼りをしてしまうリスクがあり、学ぶ人間の倫理感が問われることを忘れてはならない。

では、どのように発達科学と捉えるのか。

インテグラル理論の中で次のような言葉がある。

真に統合的な教育は、最終の段階だけを重視するのではなく、全ての段階が適切に開きだされていくことを重視するのである。
加藤監訳、門林訳「インテグラル理論」P236

あくまで最終段階を目指すのではなく、各段階には固有の良さがあり、健全に活動できていることが重要なのである。。

では、各段階の健全さとは何なのか。

ここが発達科学を学ぶ人間が考える重要な問いである。

私なりに健全さとはなにかというと、自己がおかれた意識構造に自覚的になり、自己の世界観がもつ強みを活かしながら、負の側面を理解して、それに対するカバーをすることだと考えている。

ルフィでいえば、オレンジの段階は、自己と価値体系が一体化してしまっていることが負の側面の1つである。

その点、ルフィは、仲間がいないと何もできないことを認識しており、それを仲間にも発言して頼っている。

ここに健全さが出ている。

それをおさえた上で、もう少しONE PIECEのキャラを通じてインテグラル理論をみていきたい。

トラファルガー・ローの発達段階

トラファルガー・ローの発達段階は高そうにみえるが、この点をみていきたい。

注目したいのは以下のコマ。

このコマは、ローがルフィという別の海賊にも関わらず、助けてしまっているという、自己矛盾を抱えていることに自覚している。

この点から、オレンジを脱して、グリーン段階付近といえる。

また、ローは、綿密な戦略をたてる点から、他者視点の多さが見えてとれる。

この点からもローは、グリーンの段階といえるだろう。

シャンクスの発達段階

では、シャンクスはどうだろうか。

ONE PIECEに登場する海賊たちは、海賊王を目指すというゲームそのものから抜け出せていない。

しかし、シャンクス自身は自分のおかれている状況を認識できている。

たとえば、その現れとして特徴的なコマを2つ。

上記は、エースが黒ひげを捕まえにいくところをとめるシーンであるが、暴走する時代を止められなくなるという、まるでここから頂上戦争のようなものが起こることを、今おかれているゲームの特徴からとらえられている。

こちらは頂上戦争のシーン。

海軍も白ひげ海賊団も目的を果たしているにも関わらず殺し合いを続けている戦争のゲーム自体に気づけているからこそ、終われせる動きができている。

他の海賊同様、たしかに海賊で海賊王を目指しているのだが、自分がおかれているゲームを理解したうえで、自分に課せられた使命を引き受け行動している。

また、五老星にもアプローチをしており、何か提案をしている点からも、巨視的な捉え方と打ち手を見い出せている。

このあたりは、グリーンを越えてティール段階の特徴といえる。

以上。

こうやってインテグラル理論の観点からキャラをみていくと、どのキャラが健全さを発揮されるために、何に留意すればよいかと見ていくのも面白い。

ちょっと変わった楽しみ方ではるが、何か少しでもインテグラル理論の理解に繋がれば幸いです。

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